【蕎麦の意外な事実】
蕎麦は麺としてだけでなく、パンやガレットなどにも利用されているため、世界中で利用されているグローバルな食材です。実際、世界的に見ると蕎麦を麺で食べる文化は少数派です。
蕎麦の起源は日本ではない
蕎麦の原産地は中国の雲南省であり、これはDNA検査によって判明している事実です。冷涼な気候を好み、痩せた土地でも栽培が可能なため、世界中で栽培されています。日本国内で消費される蕎麦の約80%は中国とアメリカからの輸入に依存しており、国内自給率は20%です。そのため、蕎麦屋で提供される蕎麦の80%は輸入品です。最近では、ロシアとウクライナの戦争の影響を受け、蕎麦の相場価格も影響を受けています。
順位 | 国名 | 生産量 |
1位 | ロシア | 892,000トン |
2位 | 中国 | 504,000トン |
3位 | ウクライナ | 97,000トン |
4位 | アメリカ | 86,000トン |
5位 | ブラジル | 65,000トン |
6位 | 日本 | 45,000トン |
薬から団子、そして麺に進化
蕎麦は元々薬として重宝されていました。奈良時代には、蕎麦が薬として使用された記録があります。当初の蕎麦は麺ではなく、団子の形でした。室町時代には、蕎麦の実を潰して作った蕎麦がきや蕎麦餅が誕生しました。江戸時代には、革新的な蕎麦の食べ方が大人気となり、現在の麺の形状である蕎麦切りが誕生しました。
盛り蕎麦とざる蕎麦の違い
代表的な冷たい蕎麦の食べ方として”もり蕎麦”と”ざる蕎麦”があります。これらはしばしば混同されますが、見た目と歴史には違いがあります。”もりそば”は江戸時代初期から一般的な蕎麦の食べ方として根付いてきました。これは茹でた蕎麦を冷やしてつゆにつけて食べる、蕎麦の伝統的な食べ方です。つゆは出汁と呼ばれる魚介系の食材(かつお節、煮干し、昆布など)、醤油、みりん、砂糖で味をつけたものです。時代が流れ、江戸時代後期には新たな食べ方が登場しました。1745年、江戸の深川(現在の東京都江東区)の蕎麦屋、伊勢屋で”ざる蕎麦”が開発されました。竹製の網状の盛り皿に盛り付けられるこのスタイルは、”もり蕎麦”に対して一歩進んだ進化を遂げました。現代における”もり蕎麦”と”ざる蕎麦”の違いは、その提供方法だけではありません。”ざる蕎麦”は刻み海苔が乗っており、使用されるつゆの味付けにも細かな工夫が凝らされています。
江戸時代の大ヒットコラボメニュー
江戸時代中期、天ぷらと蕎麦の屋台が人気のファーストフードとして立ち並んでいた中で、天ぷらと蕎麦の組み合わせが注目を集め始めました。文政5年(1822年)の蕎麦屋のメニューには天ぷらが掲載されており、この組み合わせが人気を博していたことが伺えます。冷たい”ざる蕎麦”に天ぷらをのせた”天ざる蕎麦”や、温かい”かけそば”に天ぷらをのせた”天ぷら蕎麦”という新しいコラボメニューは、その絶妙な食感と味わいで瞬く間に大きな人気を博しました。
十割蕎麦と八割蕎麦の違い
十割蕎麦は蕎麦粉が100%、二八蕎麦は蕎麦粉80%、麺のつなぎとして小麦粉や山芋を20%混入しています。この蕎麦粉の配合比によって味わい、食感など大きく異なります。
ちなみに「不当景品類及び不当表示防止法」によると、そば粉30%以上であれば蕎麦と認められています。
十割蕎麦 | 二八蕎麦 | |
成分 | 蕎麦100% | 蕎麦80% 小麦粉20% |
味わい | 蕎麦の濃厚な風味 | 蕎麦の風味は控えめ |
食感 | やや固めでボソボソ | モチモチとした食感 |
見た目 | 蕎麦粉の黒い粒が見える | 十割蕎麦より色が薄い |
保存性 | 低い(生めんの場合) | 高い(乾麺や冷凍の場合) |
特徴 | 本格的な蕎麦屋 | 一般的な蕎麦屋、家庭向け |
★十割蕎麦の美味しいお店
成冨 ⇒地図/営業日/営業時間
【住所】東京都中央区銀座8-18-6 二葉ビル1F
【評判】銀座の人気十割そば店/蕎麦の名店「ほそ川」出身の店主が手掛ける/透明感のある甘い蕎麦汁と、しなやかな十割そばが特徴/有名歌舞伎役者などが通う名店
蕎楽亭 ⇒地図/営業日/営業時間
【住所】東京都新宿区神楽坂3-6 神楽坂館1F
【評判】神楽坂にあるミシュラン1つ星の蕎麦店/十割そばだけでなく、手打ち麦切りも提供/蕎麦の甘みが強く、喉越しが良い
京橋 恵み屋 ⇒地図/営業日/営業時間
【住所】東京都中央区京橋3丁目4-3
【評判】銀座の有名立ち飲み蕎麦店/韃靼蕎麦が人気で、味が濃厚
【立ち食い蕎麦の味旅物語】
1950年代に誕生した立ち食い蕎麦は、飲食業界において画期的なイノベーションをもたらしました。飲食業では一般的に家賃、工事費、客数、食材原価、人件費が経営に大きな影響を与えますが、立ち食い蕎麦はこれらの指標で他を圧倒しています。狭い面積により家賃と工事費を抑えられるほか、短い滞在時間での高い客回転率が多くの売上を生み出します。また、蕎麦の食材原価は低く、アルバイトでも安定した味を提供できるため人件費も削減できます。具材の多様化も進み、かき揚げ天ぷら、玉子、カレー、コロッケなどバラエティに富んだメニューが食べ応えを提供し、立ち食い蕎麦は日本人のソウルフードとして定着してきました。
かけ蕎麦
“かけ蕎麦”は、蕎麦を器に入れて熱い蕎麦つゆを掛けたオーソドックスな蕎麦です。年末の年越し蕎麦のように、寒い時期に好まれる食べ方ともなっています。また、薬味には葱程度のトッピングが一般的です。
かき揚げ蕎麦
“かき揚げ蕎麦”は、小さく切ったエビやイカ、野菜などを小麦粉にまぜて油で揚げたものを、蕎麦にのせた蕎麦です。かき揚げは、天ぷらの一種で、独特の食感が特徴です。かき揚げ蕎麦は、一般的な天ぷら蕎麦よりも手頃な価格で満足感が得られる人気のメニューで、店によってかき揚げの具材や大きさが異なります。
月見蕎麦
“月見そば”は、温かい蕎麦の上に生卵をのせた蕎麦です。卵の黄身は月に、白身は雲に見立ててお月見の風情を楽しむ料理です。月見とは日本古来の風習で旧暦の8月15日に月を鑑賞する行事が由来です。
カレー蕎麦
カレー蕎麦は温かい蕎麦にスパイシーなカレーソースをかけた蕎麦です。蕎麦屋のカレーは出汁の味が加わるため普通のカレーとも味わいが異なります。この蕎麦屋のカレーは隠れた人気メニューにもなっています。
コロッケ蕎麦
“コロッケ蕎麦”は肉やジャガイモをまぜて小麦粉、卵、パン粉をつけて油で揚げたコロッケをのせた蕎麦です。この蕎麦は手頃な価格で満腹感を得ることができます。
★立ち食い蕎麦の美味しいお店
ゆで太郎 銀座1丁目店 ⇒地図・営業日・営業時間
【住所】東京都中央区銀座1-18-2 1F
【評判】「良い品質のそばを普通の半額で提供する」というコンセプトで人気の立ち食いそば店/特に「もりそば」が評価が高く、強烈なそばの香りが特徴
笠置そば 西荻窪店 ⇒地図・営業日・営業時間
【住所】東京都杉並区西荻南3-11-7
【評判】中規模チェーンの立ち食いそば店/「海鮮かき揚げそば」が人気メニュー/豪華な具材のかき揚げが特徴的
西新宿五丁目駅そば家 ⇒地図・営業日・営業時間
【住所】東京都新宿区西新宿4-5
【評判】立ち食いそば店の中でも評価が高く、立地も便利な駅構内/手頃な価格と美味しさで人気
若菜そば阪急梅田駅三階店 ⇒地図・営業日・営業時間
【住所】大阪府大阪市北区角田町9-16
【評判】阪急梅田駅にある立ち食いそば店/肉そばが人気/リーズナブルな価格が魅力
浪花そば ⇒地図・営業日・営業時間
【住所】大阪府大阪市淀川区西中島5-16-1新大阪駅
【評判】新大阪駅構内の店舗/綺麗な外装と広めの席数が特徴/立ち食いそば屋特有の入りにくさが少ない/メニューが豊富
【日本三大蕎麦の味旅物語】
日本国内に数多くある蕎麦の中から日本三大蕎麦が選ばれた理由は独特の提供方法、盛り付けにあります。
わんこ蕎麦(岩手県)
岩手県盛岡市と花巻市を中心に広まった郷土料理、わんこそばは一口サイズの温かいそばを「わんこ」と呼ばれる小さなお椀に入れて提供されます。食事中、客が一杯食べ終わると次々と新しいそばが供されます。通常は10~15杯を一度に食べ続け、満腹になった場合はお椀に蓋をして終了を知らせます。蕎麦はのど越しを良くするために通常より短く切られており、つゆは濃いめに味付けされています。このため、一口ごとに麺につゆを絡めることで食べやすくなっています。
★わんこそばの美味しいお店
芭蕉館 ⇒地図・営業日・営業時間
【住所】岩手県西磐井郡平泉町平泉字鈴沢3-1
【評判】元祖盛り出し式のわんこそばを提供する老舗店/小さな椀に盛られたそばと、お漬物や薬味が御膳に並べられる/天ぷら付きのわんこそば/三種の味を楽しめる三代そばなど多彩なメニュー
やぶ家 ⇒地図・営業日・営業時間
【住所】岩手県花巻市吹張町7-7-17
【評判】わんこそばの発祥の地に本店を構える歴史あるお店/地元産の岩手早生そば粉を使った二八そばを提供/子供用のわんこそばもメニューにある
駅前芭蕉館 ⇒地図・営業日・営業時間
【住所】岩手県西磐井郡平泉町平泉泉屋82
【評判】平泉駅から徒歩1分の好アクセスの店/盛り出し式のわんこそばを楽しめる/30杯限定のコースや食べ放題コースがあり、小食の人でも気軽に挑戦可能
戸隠蕎麦(長野県)
戸隠蕎麦は、その歴史が平安時代に遡り、修験道の道場である戸隠神社で修行僧たちが携帯食糧として蕎麦粉を持ち込んだことに始まります。初めは蕎麦粉を水で溶いた簡素な食べ物でしたが、やがて「蕎麦がき」や「蕎麦焼き餅」が作られるようになりました。江戸時代には寛永寺の僧侶から戸隠神社の奥院へ「そばきり」の技術が伝わり、参拝客に提供される特別料理として発展しました。この蕎麦は、甘皮を取らずに挽いた蕎麦粉で打たれ、五束程度の一口サイズの蕎麦を並べるぼっち盛りが戸隠蕎麦の特徴です。
★戸隠蕎麦の美味しいお店
うずら家 ⇒地図・営業日・営業時間
【住所】長野県長野市戸隠中社3229
【評判】戸隠神社中社の近くの人気店/石臼で挽いた香り高い新そばを提供
岩戸屋 ⇒地図・営業日・営業時間
【住所】長野県長野市戸隠3501-イ
【評判】毎日使う分だけの蕎麦を打つ、歯ごたえのあるそばが人気/そば粉の良さを感じさせる舌触りと歯ごたえが特徴的
仁王門屋 ⇒地図・営業日・営業時間
【住所】長野県長野市戸隠3419
【評判】そば粉の良さを活かした、しっかりとした歯ごたえのあるそばが人気/5種類の削り節を使う麺つゆ
出雲そば/割り子そば(島根県)
西日本の出雲で蕎麦が名物になった理由は江戸時代までさかのぼります。
蕎麦で有名な長野県の信濃松本藩の大名、松平直政が島根県の出雲松江藩にお国替えになった際に蕎麦職人を一緒に連れてきたからと言われています。
この蕎麦は殻ごと挽く「挽きぐるみ」の方法で製粉されるため、特有の黒い色と強い香りを持っています。これが出雲地方で「そばは黒くなければそばではない」と言われる理由です。
また”割子そば”は江戸時代に出雲大社を訪れる旅行者向けの食事として発展しました。割子そばは、2段や3段の丸い器に盛られ野外で食べるための弁当箱として用いられていました。それぞれの段にそばが入れられ、食べ進めるにつれて異なる味わいを楽しむことができます。
★出雲そばの美味しいお店の住所と特徴
荒木屋 ⇒地図・営業日・営業時間
【住所】島根県出雲市大社町杵築東409-2
【評判】出雲大社の約240年続く出雲そば最古の店/石臼挽きの「二八そば」は、3種のそば粉をブレンドした風味豊かなそば/なめこおろしとウズラの2段割子そばにそばぜんざいが付いている「縁結び天セット」が人気
喜多縁 ⇒地図・営業日・営業時間
【住所】島根県出雲市平田町989-4
【評判】”出雲そばりえ”の店主が2年前にオープンした落ち着いたお店/地酒や地元食材を中心に提供し、そば前と出雲そばをゆっくり楽しめる/出雲そばセットや定食が人気メニュー
そば処かねや ⇒地図・営業日・営業時間
【住所】島根県出雲市大社町杵築東四ツ角659
【評判】出雲大社前の人気店で、割子そばのほか温かいそばも種類豊富に提供/ドロッとした濃厚なそば湯が特徴/一畑電車出雲大社前駅から徒歩約10分の好立地