【魚以外の握り寿司の味旅物語】
エビ、カニ、イカ、タコ、アワビ、帆立といった魚以外の海産物も握り寿司として人気があります。これらの食感、味わいは魚の握り寿司とは大きな違いがあります。
甘海老(有名/低価格帯)
甘海老は、ホッコクアカエビ(学名:Beryx splendens Lowe)という正式名称で知られており、タラバエビ科に属するエビの一種です。生息域は北太平洋の日本海北部沿岸からオホーツク海、ベーリング海、そしてカナダ西岸までの水深約200-700mの深海底に広がっています。生きている間は甘くないですが、死後に自己消化酵素が活性化されることでアミノ酸が分解され、甘味が生まれます。旬は11月から2月で、この期間に甘味が最も強くなるとされています。
クルマエビ(有名/中~高価格帯)
クルマエビ(学名:Marsupenaeus japonicus)は代表的な海老で、天然のものは珍しく、ほとんどが養殖されています。旬は10月から1月頃で、濃厚な甘味とプリッとした食感が特徴です。脂肪が少なく、低カロリーな食材であり、握り寿司では生のものや茹でたものが使用されます。
牡丹海老(希少性高い/高価格帯)
牡丹海老(学名:Pandalus nipponensis)の旬は雌雄で異なります。雄は春、雌は秋が旬とされています。主に太平洋側で獲れるこのエビは、その価格からも高級寿司店でしか見ることができません。身は弾力があり、口の中でとろけるような食感と甘みが特徴です。
シャコ(有名/低~中価格帯)
形状は似ていますが、シャコ(学名:Oratosquilla oratoria)は海老とは別種の甲殻類です。身質は海老よりも柔らかく、あっさりしている一方で濃厚な旨味が特徴です。シャコの大きさは通常20cm前後で、前足には非常に強力なパンチ力があります。この前足の部分(シャコツメ)は濃縮した旨味が特徴で、酒の肴として人気があります。
ズワイガニ(有名/中~高価格帯)
ズワイガニ(学名:Chionoecetes opilio)は、主に日本海で獲れる中型のカニで産地によって「松葉ガニ」「越前ガニ」「加能ガニ」など、様々な呼び名で知られています。兵庫県と鳥取県が主な産地で、兵庫県では「香住ガニ」「柴山ガニ」として高級ブランド化されています。また、ズワイガニの旬は雄雌で異なります。雄の旬は11月~翌年3月、 雌の旬は11月~翌年1月です。他のカニに比べると味が淡白な印象ですが、鍋料理や寿司、刺身など、さまざまな料理で楽しむことができます。握り寿司にする場合は、足の身を酢飯の上にのせて提供されます。
アオリイカ(有名/中価格帯)
アオリイカ(学名: Sepioteuthis lessoniana)は、5月から8月にかけてが最も旬の時期です。その身は弾力があり、甘みを含んだ味わいが特徴です。イカ類の漁獲量は1980年代には国内で75万トンに達していましたが、最近では全盛期の約10分の1まで激減しています。その結果、東南アジアやアメリカなどから近縁種が輸入されています。
スルメイカ(有名/低価格帯)
スルメイカ(学名:Todarodes pacificus)は日本で最も消費されるイカの一種です。国内の漁獲の半分以上が北海道と青森県で行われ、その他の地域でも捕獲されるため、価格と味は安定しています。焼き物、煮物、塩辛、干物、握り寿司や刺身など、さまざまな調理法があります。特に甘みが濃く、ワタ(内臓)の味が美味しいのが特徴です。
蛸(有名/低~中価格帯)
マダコは11月から1月の冬が旬で、しっかりとした歯ごたえと濃厚な旨味が特徴の高級タコとして知られています。ミズダコは主に夏が旬ですが、一年中水揚げされています。柔らかく甘みが強いのが特徴です。蛸(学名:Octopus vulgaris Cuvier)を握り寿司にする場合は、煮たり生のまま使用したりします。どちらの方法でも、弾力性のある食感が楽しめます。特に生の蛸は甘みがあります。
牡蛎(有名/低~中価格帯)
日本国内で流通する主な牡蠣(学名:Crassostrea gigas)は、以下の2種類があります。5月から8月が旬の岩牡蠣(イワガキ)は、殻も身も大ぶりでクリーミーな味わいが特徴です。天然ものと養殖ものがあります。ほぼ100%が養殖されている真牡蠣(マガキ)は12月から2月が旬で、身がしっかりしており、バランスの良い味わいがします。生食用と加熱用の牡蠣は栄養成分が同じですが、生食用は食品衛生法の基準をクリアしているため、食中毒のリスクが軽減されています。
栄螺(有名/中価格帯)
栄螺(学名: Turbo sazae)は、大きいもので殻高20cmにもなるゴツゴツとした円錐形の巻貝です。この貝は日本で代表的な食用貝として親しまれています。波の荒い外洋で育ったものは角が多く、内湾で育ったものは角が少ない形状が特徴です。旬は春から初夏にかけてで、主な産地は三重県、千葉県、長崎県、山口県、石川県ですが、一年を通して味が安定しているため、季節を問わず楽しめます。特徴はコリコリとした食感と磯の香りです。
鮑(有名/高価格帯)
鮑(学名: Haliotis discus)は巻貝の一種で、日本で食べられるアワビは主にクロアワビ、エゾアワビ、マダカアワビの3種類です。成長が遅く、11cmに達するまでに5年以上かかるため、非常に高価な食材です。主な産地は房総半島、伊豆半島、伊勢志摩、輪島などで、旬は7月から9月の夏とされています。コリコリとした食感が魅力で、刺身や寿司の他に、ステーキなどの調理法でも利用されます。
つぶ貝(有名/低価格帯)
つぶ貝(学名:Neptunea polycostata Scarlato)は、巻貝の一種で、北海道や東北地方の冷たい海で漁獲されます。コリコリとした食感があり、アワビに似た食感ですが、甘みや旨味はアワビよりも強いのが特徴です。主に春先から初夏にかけてが旬です。生で食べると磯の香りが楽しめ、加熱すると甘みや旨味が引き立ちます。
とり貝(有名/中~高価格帯)
トリガイ(学名:Fulvia mutica)は、日本を含む東アジアの沿岸に生息する二枚貝です。名前の由来は、食用とされる貝の身の形が鳥のくちばしに似ていることからです。この貝は主に東京湾、三河湾、伊勢湾、瀬戸内海などで漁獲され、旬は地域によって異なります。太平洋側では春先が旬で、日本海側では夏が旬とされています。トリガイは特に刺身や寿司ネタとして利用され、噛み応えがありつつも柔らかく、ほのかな甘みが特徴です。冷凍しても食味が変わらず、年間を通して利用されていますが、生の状態での市場価値が高く、高級食材として扱われています。
あか貝(有名/中~高価格帯)
アカガイ(学名:Anadara broughtonii)は、日本、朝鮮半島、中国、台湾、極東ロシアの内湾や浅海の砂泥底に生息する二枚貝です。特徴的な赤い血液はエリスロクルオリンの存在によるもので、これが赤貝の名前の由来です。殻は最大で長さ12cm、高さ9.6cmに達します。食用としては、特に寿司や刺身に利用されます。また、近年は中国や韓国からの輸入品が市場を占めています。
帆立(有名/中~高価格帯)
ホタテ(学名:Mizuhopecten yessoensis)は、東北地方の青森県、岩手県の三陸海岸以北や北海道が主な産地です。この二枚貝は最大で20cmにも達します。ホタテの旬は二回あり、5月から8月は貝柱が大きく育ち、12月から3月は卵が発達する時期です。刺身や寿司ネタ、煮込み、バター焼き、スープ、フライなど多様な料理で使用され、生食用としての需要も高いです。
【軍艦巻きの味旅物語】
軍艦巻きは、酢飯を海苔で巻き上げ、その上に小魚、貝、魚卵などを盛り付けるスタイルの寿司です。握り寿司では扱いにくい、崩れやすい海鮮素材を、この形式を用いて堪能することができます。その見た目が軍艦に似ていることから、”Gunkan”(軍艦)という名前がつけられました。
イクラ(有名/高価格帯)
イクラ(学名: Oncorhynchus keta)は、主にサケ科の魚の卵で、日本国外ではあまり馴染みのない食材です。サケのイクラの方がマスのイクラよりも高級扱いされ、3〜4割ほど高価になります。イクラの旬は9月から11月で、北海道、新潟、宮城などが主な産地です。これらの魚卵は醤油漬けにして軍艦寿司として提供されます。独特の食感と味わいが特徴で、軍艦寿司の定番です。
とびっこ(有名/低価格帯)
とびっこは飛び魚(学名: Cheilopogon agoo)の魚卵で、イクラのような鮮やかなオレンジ色をしており、粒の大きさは約1ミリです。春先から夏にかけてが旬で、脂肪分が少なくあっさりとした味わいが特徴です。イクラに比べて魚卵の粒が小さいため、歯応えのあるプチプチ感を楽しめます。価格も手頃なため、寿司弁当などで頻繁に見ることができます。
白子(希少性高い/中価格帯)
白子(学名:Gadus chalcogrammus)は魚の精巣で、特にタラの白子が有名です。新鮮な白子は口の中でトロトロと溶けていく濃厚な食感が特徴です。1月から2月の期間の白子は量も多く、水っぽさも少ないため旬です。ポン酢で味わうのが一般的で、鍋料理にも利用されています。
雲丹(有名/高価格帯)
雲丹(学名: Hemicentrotus pulcherrimus)は、その卵巣や精巣が食用にされます。ウニの味わいは濃厚で、魚や貝、魚卵とは全く異なります。そのため、軍艦寿司の中でも特に人気が高く、高級寿司の一つとされています。また、ウニの種類や産地によって旬の時期は異なります。ムラサキウニは身の色が白く、淡白で甘い味わいが特徴で、6月から8月が旬です。バフンウニは濃厚でコクのある味わいがあり、北海道の各地で一年中収穫されます。キタムラサキウニは青森県で収穫され、秋から年末にかけて旬を迎えます。その味わいは濃厚です。エゾバフンウニは3月頃に北海道で旬を迎え、バフンウニに似た味わいです。
あん肝(希少性高い/中価格帯)
あん肝は深海魚アンコウ(学名: Lophius litulon)の肝臓を酒蒸しにしたもので、「海のフォアグラ」とも称されるほど濃厚な味わいが特徴です。あん肝の旬は12月から2月にかけてで、この時期に最も味わいが濃くなります。産地として有名な茨城県大洗では、あんこうの解体ショーが人気を集めています。この魚は10キログラムを超える巨体を持ち、その解体のために「あんこうの吊るし切り」という独特の方法が開発され、これが冬の風物詩として受け継がれています。
シラス(希少性高い/中価格帯)
シラスはカタクチイワシ(学名: Engraulis japonicus)の稚魚です。鮮度が落ちやすいため、生で食べるシラスの軍艦寿司は非常に貴重です。禁漁期間が設けられているため、その時期には新鮮なシラスを食べることはできません。産地である兵庫県の淡路島や静岡県では、春と秋が旬ですが、特に水温が高い6月から9月が最も美味しい時期とされています。
ホタルイカ(有名/低価格帯)
ホタルイカ(学名:Watasenia scintillans)は深海に生息する小型のイカで、体にいくつもの発光器がついており、青白く発光する姿が美しく神秘的です。旬の時期は3月から6月頃で、特に富山県では3月1日に解禁され、大量に水揚げされます。この時期のホタルイカは大きく肉厚で、鮮度が抜群です。旬のホタルイカは身が引き締まり、甘みが増し、柔らかな食感が特徴的です。茹でると胴が丸くツヤのある状態になります。
蟹味噌(希少性高い/中価格帯)
蟹味噌は、蟹(Chionoecetes opilio)の甲羅を取り除き、集められた茶色のペースト状の部分で、蟹の肝臓と膵臓に相当します。この部分は濃厚な味わいが特徴です。旬は蟹の種類によって異なり、毛ガニは12月から2月、ズワイガニは4月から7月、タラバガニは4月から5月および9月から10月が旬です。蟹の甲羅を開けてそのままスプーンで掬って食べるのが定番です。回転寿司などでは軍艦巻きとしても提供されます。